登場人物を見る
■中学生司書(Book Birds)
本沢このみ
森本栞
石森樹
森田胡桃
■ビデオ担当
舞
■本の虫のクイズショー&本のない世界は怖いでショー
スットコ
ドッコイ
ショー
◆図書館の少年・少女
リカ
リン
コトミ
マイ
ディボリー
ライラ
クラリス
エレナ
ロザーナ
マリーネ
ポラン
ダニエル
◆Fireman
グスタボーラ将軍
ナスタチウム
ディコン
ムラード
■サタン酸性とアンパンマンの親戚
少年
サタン酸性
アンポンタン
■プロローグ
このみ ゲキを止めるな!
全員 ゲキを止めるな!
舞 (客席通路から)ストップ!
演劇部員が舞台袖から出てくる。舞は上手の舞台下からビデオカメラで撮影をしている。
このみ 舞さん。なんで止めたの?
舞 ビデオカメラのバッテリーが切れました。
このみ それって、撮影できないってこと?
舞 大丈夫。替えのバッテリー、持ってきてます。
このみ 舞さん。ナイス。みんな聞いて。明日、緊急事態宣言が出てすべての部活が活動禁止になるよね。だから、今この時間が、地区大会に提出する映像を撮影する最後のチャンス。でも、このホールを使えるのはあと30分。だから、どんなことがあっても、ゲキは止めない。
舞 撮影、準備できました。
このみ もう一度掛け声かけるよ。
みんな はい。
このみ ゲキを止めるな!
みんな ゲキを止めるな!
■もう一つのプロローグ
4人の中学生司書(Book Birds)が登場する。
このみ みなさん、
全員 こんにちは。
このみ 森林の国シンリードの森の中にある「森の中の図書館」にようこそ。私たち4人はBook Birdsです。リーダーの本沢このみです。
栞 森本栞です。
樹 石森樹です。
胡桃 森田胡桃です。
4人 よろしくお願いします。
このみ Book Birdって何でしょう。
栞 Book Birdは本の鳥。
樹 私たちBook Birdsは本をドラマにして羽ばたかせて、
胡桃 この図書館を訪れた人に届けるんです。
このみ これからみなさんを、この図書館の中にある本の森へとご案内いたしましょう。
栞 見てください。ここにも、
樹 ここにも、
胡桃 ここにも、
このみ 天井まで伸びる本棚があります。
栞 この図書館の中にある本の森から、今日は、どんなドラマをお届けしましょうか。
樹 そうそう、私たちは本を紹介する短い劇を
胡桃 「ビブリオスキット」と呼んでいます。
このみ それでは最初のビブリオスキットを紹介しましょう。
栞 第1話
全員 「本の虫のクイズショー」
Book Birdsが退場する。
ビブリオスキット第1話 「本の虫のクイズショー」
スットコ・ドッコイ・ショーと子どもたちが登場する。
子どもたちは舞台上で立っている。
スットコ みなさん
スットコ・ドッコイ・ショー こんにちは。
子どもたち こんにちは。
スットコ 「森の中の図書館」に
スットコ・ドッコイ・ショー ようこそ。
スットコ 俺たち3人は「森の中の図書館」の中学生司書。俺はスットコ。
ドッコイ 俺は、ドッコイ。
ショー 俺はショー。
スットコ・ドッコイ・ショー 3人合わせて、スットコ・ドッコイ・ショー。
スットコ さて、今日は君たちにどんな本を紹介しようかな。
リカ はい。
スットコ 君の名前は。
リカ リカ。質問してもいい?
スットコ・ドッコイ・ショー どうぞ。
リカ 私、フランソワって友達がいるんだ。フランソワは、お父さんから推理小説読んじゃダメって言われてるの。
スットコ どうしてダメなんだい?
リカ 人が殺されるからだって。
スットコ・ドッコイ・ショー そうなんだ!
リカ フランソワ、人が死なない推理小説が読みたいんだって。そんな本あるかな?
その質問の後、スットコ・ドッコイ・ショーが打ち合わせをする。
スットコ 一つ質問させてくれ。どうして人が殺される話を読んじゃいけないんだい?
リカ 人が殺される話を読むと、悪い人になっちゃうんだって。
スットコ・ドッコイ・ショー 悪い人だってー。
スットコ ってことは、たくさんの推理小説を読んでいる俺たちは、
スットコ・ドッコイ・ショー 「極悪人」
スットコ ってことになるな。まっ、いいだろう。フランソワにお勧めの本があるよ。
リカ ほんと!?
ドッコイ ただし、俺たちがお勧めするのは「殺し」が描かれてない推理小説じゃない。
ショー たくさんの「殺し」が描かれている推理小説だ。
リカ それじゃ、フランソワのお父さんがゆるしてくれないよ。
スットコ いや、俺たちがお勧めする本は、きっと
スットコ・ドッコイ・ショー ゆるしてくれる。
リカ 「殺し」が描かれている本なのに?
スットコ そう、「殺し」が描かれている本なのに。
ドッコイ そして、その「殺し」はとっても残酷なのに。
リカ 残酷なの?
スットコ とーっても
スットコ・ドッコイ・ショー 残酷。
ドッコイ ただ殺すんじゃなく、相手を動けなくした後、ゆっくりゆっくり殺していく。
スットコ 残酷だ!
スットコ・ドッコイ・ショー 残酷すぎる!
スットコ でもその本を読んでると、お父さんは
スットコ・ドッコイ・ショー 大喜び。
ドッコイ お母さんも
スットコ・ドッコイ・ショー 大喜び。
ショー 先生だって
スットコ・ドッコイ・ショー 大喜び。
リン そんな推理小説あるわけないよ。
スットコ それが
スットコ・ドッコイ・ショー あるんだな。
スットコ おそらく君たち全員が知ってる本だ。
リン 私たち全員が知ってるの?
スットコ・ドッコイ・ショー そうだねー。
スットコ さて、それではクイズだ。
ドッコイ その本の題名は何でしょう?
コトミ 『そして誰もいなくなった』
スットコ アガサ・クリスティの名作推理小説。それは
スットコ・ドッコイ・ショー ブブー。不正解。
マイ 『名探偵コナン』
ショー 青山剛昌の傑作マンガ。それは
スットコ・ドッコイ・ショー ブブー。不正解。
リン 『サザエさん』
スットコ・ドッコイ・ショー 『サザエさん』?!
スットコ それは
スットコ・ドッコイ・ショー 正解。
リン 正解なの!
スットコ そんなわけないよなー。
ドッコイ 「殺し」がでてくる『サザエさん』、想像できるかな。
コトミ 答えを教えてよ。
スットコ わかった。答えを教えよう。
ドッコイ その答えは
スットコ・ドッコイ・ショー ジャーン!(本を手に取って)『ファーブル昆虫記』
コトミ それ虫の話じゃない。「殺人」なんて出てこないよ。
スットコ 俺たち、いつ、「殺人」って言ったかな。
ドッコイ 俺たちは、ただ「殺し」って言ったんだ。
ショー 「殺人」なんて言ってない。
スットコ 『ファーブル昆虫記』には、たくさんの「殺し」が出てくる。
ドッコイ 狩人バチは針で獲物を一刺し。
ショー 獲物を麻痺させて卵を産みつける。
スットコ 孵化した幼虫は獲物を生かしたまま少しずつ食べていく。
ドッコイ それは狩人バチによるマジックショー。
コトミ マジックショー?
スットコ・ドッコイ・ショー ショーだね。
スットコ それが残酷なマジックショーなのは、
スットコ・ドッコイ・ショー ショーがない。
スットコ 虫の世界の話だから。
ドッコイ 『ファーブル昆虫記』を読んじゃダメとは誰も言わないで
スットコ・ドッコイ・ショー ショー。
スットコ もしまだ読んだことがないなら、
ドッコイ ぜひ読んでみま
スットコ・ドッコイ・ショー ショー。
マイ でも、『ファーブル昆虫記』は推理小説じゃないよ。
スットコ・ドッコイ・ショー ショーかなー。
スットコ 虫の世界は謎でいっぱい。
ドッコイ 虫の世界は無視できない。
ショー その謎を抜群の推理力で解明していくのが
スットコ・ドッコイ・ショー 『ファーブル昆虫記』。
スットコ この本は、ファーブル先生の見事な推理が書かれている
スットコ・ドッコイ・ショー 推理小説なのさ。
スットコ 『ファーブル昆虫記』だけじゃない、
ドッコイ この図書館は虫の本でいっぱいだ。
ショー そして、虫の本が大好きな俺たちは、
スットコ・ドッコイ・ショー 本の虫。
ドッコイ さあみんな、今日は虫の本を楽しんでみよう。
ショー そしてみんなでめざそう、
スットコ・ドッコイ・ショー 本の虫。
みんなが笑う。
スットコ・ドッコイ・ショーが退場する。
4人のBook Birdsが登場する。
このみ 次は、2冊の本を掛け合わせてドラマを生み出します。
栞 2冊の本とは
樹 『ルパン三世』と
胡桃 『それいけ! アンパンマン』
このみ ルパン三世は怪盗アルセーヌ・ルパンの孫という設定です。
栞 作者はモンキー・パンチ。テレビアニメや映画にもなりました。
樹 アルセーヌ・ルパンはモーリス・ルブランが生み出した「怪盗ルパン」シリーズの主人公です。
胡桃 ちなみに江戸川コナンの彼女、毛利蘭はモーリス・ルブランを短くしたものだと言われています。
このみ 『それいけ! アンパンマン』の作者はやなせたかし。
栞 アンパンマンは、敵を倒す強いヒーローではありません。
樹 空腹で苦しむ人に食べ物を差し出すヒーローです。
胡桃 アルセーヌ・ルパンとの共通点はどちらも敵を殺さないこと。
このみ これから紹介するビブリオスキットではルパンではなくサタンが、アンパンマンではなくアンパンマンの親戚が登場します。
栞 第2話
全員 「サタン酸性とアンパンマンの親戚」
Book Birds が退場する。
ビブリオスキット第2話「サタン酸性とアンパンマンの親戚」
校長先生が上手に置かれている椅子に座っている。
舞台両袖から少年(上手から)とサタン酸性(下手から)が歩いてくる。
少年とサタン酸性は舞台上で出会う。
少年 君は誰?
サタン酸性 僕はサタン酸性。
少年 三世じゃないの?
サタン酸性 サタンは三世ではなく酸性なんだ。
少年 どう違うの?
サタン酸性 世の中には酸性のものとアルカリ性のものがあるだろ。
少年 あるね。
サタン酸性 僕は、人にも酸性とアルカリ性があると思うんだけど、その考えに、賛成?それとも、アルカリ性?
少年 それってどう答えたらいいの?
サタン酸性 まずは、酸性とアルカリ性の確認からだね。アンモニアは?
少年 アルカリ性。
サタン酸性 塩酸は?
少年 酸性。
サタン酸性 硫酸は?
少年 酸性。
サタン酸性 ルパンは?
少年 三世。
サタン酸性 そう、ルパンは酸性だ。
少年 でも、それは三世でしょ。
サタン酸性 あれ、僕の考えに反対?
少年 反対じゃないけど、
サタン酸性 反対じゃないなら、賛成ってことだよね。
少年 まーいっか。ルパンは酸性ってことに賛成する。
サタン酸性 僕もルパンと同じなんだ。サタンはちょっと酸っぱい性格のサタン酸性。これから、ヒーロー養成学校の校長先生に抗議しに行くんだ。
少年 校長先生って?
サタン酸性 ほら、アンパンマンの親戚の、
少年 あー、アンポンタン。
サタン酸性が歩き始める。サタン酸性が校長室のドアをノックする(パントマイム)。
アンポンタン 入りたまえ。
サタン酸性が校長室に入る。
サタン酸性 アンポンタン校長先生。
アンポンタン 何だね、サタン君。
サタン酸性 この質問に対しての僕の答え、なぜ×なんでしょうか。
アンポンタン 質問を読んでみなさい。
サタン酸性 「『あくまで』という言葉を使って、文を作りなさい」
アンポンタン 君の答えは?
サタン酸性 「僕は、あくまで・す」、僕の答えにはちゃんと「あくまで」が入ってます。
アンポンタン サタン君。それが正解なら、「『まさか』という言葉を使って文を作りなさい」という質問に、「僕は、まさかずです」と答えても正解になってしまう。
サタン酸性 (笑い出す)まさか! 僕は、まさかずではありません。
アンポンタン それでは、「僕は悪魔です」と答えた君は、悪魔なのか?
サタン酸性 はい。僕はヒーローになるためなら、悪魔にだってなります。
アンポンタン サタン君、それはヒーローではない。ヒーローの姿を借りた悪魔だ。
サタン酸性 ○でしょうか。
アンポンタン ×だ。こんなことはサルでもわかる。
サタン酸性 校長先生、今「サルでもわかる」と言いましたね。ワオキツネザルでもわかりますか?
アンポンタン サタン君。「サルでもわかる」というのは言葉の綾だ。
サタン酸性 言葉の亜弥?
アンポンタン 言葉の亜弥じゃない。綾だ。
サタン酸性 違いが、よくわかりません。校長先生、「言葉の亜弥」は、「言葉のメアリー」とどう違うんですか?
アンポンタン 昔からある日本語のいいまわしに、メアリーなんて名前が入るわけがない。
サタン酸性 そうでしょうか。
アンポンタン もし、例外があるというなら、言ってみなさい。
サタン酸性 「壁にミミあり障子にメアリー」
アンポンタン ……
サタン酸性 このことわざにはメアリーという名前が入っています。
アンポンタン サタン君。それはメアリーではない。
サタン酸性 キャサリンでしたか? 「壁にミミあり障子にキャサリン」
アンポンタン ありえない。
サタン酸性 「壁にミミあり障子にジェファーソン」
アンポンタン サタン君。そこに入るのはキャサリンでもジェファーソンでもクリスティーナでもない。
サタン酸性 校長先生。僕、クリスティーナなんて言ってません。
アンポンタン サタン君。そこに入るのは「目」、「目あり」だ。
サタン酸性 校長先生。やっぱりメアリーでよかったんですね。
アンポンタン サタン君……
サタン酸性 ○でしょうか。
アンポンタン (怒って)×だ。
サタン酸性とアンポンタン校長先生は退場すると同時に、Book Birdsのこのみと栞が登場する。
このみ 次のビブリオスキットにはスットコ・ドッコイ・ショーにもう一度登場してもらいます。
栞 第3話
全員 「本のない世界は怖いでショー」
ビブリオスキット第3話 「本のない世界は怖いでショー」
スットコ・ドッコイ・ショーと子どもたちが登場する。
スットコ 俺はスットコ。
ドッコイ 俺は、ドッコイ。
ショー 俺はショー。
スットコ・ドッコイ・ショー 3人合わせて、スットコ・ドッコイ・ショー。
スットコ みんな何か俺たちに聞きたいことがあるかな。
エレナ はい。(そう言って手を挙げる)
スットコ 名前は?
エレナ エレナ。私、ジャンって友達がいるんだ。ジャンはお父さんから推理小説読んじゃダメって言われてるの。
スットコ ジャンもそうなんだ。でもなんで?
エレナ 人が殺されるからだって。
スットコ・ドッコイ・ショー そうなんだ。
エレナ ジャン、人が死なない推理小説が読みたいって言うんだけど、そんな本あるかな? 『ファーブル昆虫記』じゃなくて。
スットコとドッコイとショーが集まって相談する。
スットコ 俺たちのお勧めは、
スットコ・ドッコイ・ショー こいつだ!
3人が『少年探偵シリーズ』を示す。
スットコ 『少年探偵シリーズ』。
ドッコイ 書いたのは日本の作家
ショー 江戸川乱歩。
スットコ 俺のお勧めはこいつ、『青銅の魔人』。
ドッコイ 発売されたのは1949年。
ショー 日本では昭和24年に当たる年だ。
エレナ ずいぶん昔の本なんだね。
スットコ それだけ長い間、
ドッコイ 読み続けられてるとも
スットコ・ドッコイ・ショー 言えるよな。
エレナ どんな話なの?
スットコ 名探偵・明智小五郎と変装の名人の怪人二十面相の知恵比べの
スットコ・ドッコイ・ショー ドラマだ。
エレナ 人は死なないんだ。
スットコ だーれも
スットコ・ドッコイ・ショー 死なない。
スットコ なんせ、怪人二十面相は血が嫌いだからねー。
ドッコイ 盗みはするけど
ショー 人は殺さないのさ。
スットコ ちなみに、怪人二十面相のモデルはモーリス・ルブランの生み出した怪盗アルセーヌ・ルパンなんだ。
エレナ ありがと。私、『少年探偵シリーズ』、ジャンに紹介する。
スットコ・ドッコイ・ショー ちょっと待ったー。
エレナ 何?
スットコ ジャンのお父さん、どうして人が殺される話を読んじゃいけないって言ってるのかな?
エレナ 人が殺される話を読むと、悪い子になっちゃうからだって。
スットコ・ドッコイ・ショー 悪い子だって!
スットコ それじゃ『名探偵コナン』も読めないね。たくさん人が殺されるから。
エレナ コナンも禁止されてるって言ってた。
ロザーナ えーっ、コナンも禁止。
スットコ 実は、この『少年探偵シリーズ』、日本中で読むのを禁止されたことがあるんだぜ。
ドッコイ それは、日本が戦争してた時のこと。
ロザーナ なんで禁止されたの?
スットコ 「日本には泥棒なんてする悪い人はいないのに、泥棒のことを書くのは子どもたちにとってよくなーい」って理由だ。
ロザーナ でも日本はその時戦争してたんでしょ?
スットコ・ドッコイ・ショー ショーだね!
ロザーナ っていうことは、敵の国の人を殺しに行ってたんでしょ?
スットコ・ドッコイ・ショー ショーだね!
ロザーナ 人を殺すことは泥棒することよりも悪いことじゃないの?
スットコ 敵の人を殺すことは
スットコ・ドッコイ・ショー いいことなのさ。
ロザーナ 敵の人も同じ人なのに。
スットコ そう
スットコ・ドッコイ・ショー 同じ人なのに!
ロザーナ それ変じゃない?
スットコ うん、俺たちも
スットコ・ドッコイ・ショー 変だと思う。
スットコ でも、戦争が始まると、誰もそれを変だと思わなくなっちまう。
ロザーナ どうして?
スットコ (首を傾げて)どうしてなのかな。
ドッコイ それが分かれば、戦争なんて
スットコ・ドッコイ・ショー なくなるかもね。
スットコ ところで、その時の戦争で、どれだけの日本人が死んだか知ってるかい?
ロザーナ たくさん死んだの?
スットコ ……三百十万人。
ロザーナ 三百十万人!
スットコ 不思議だろ。泥棒がいない素晴らしい国でそんなたくさんの人が死んだなんて。
ドッコイ ところで、誰かこの本読んだことあるかな。
ポラン 『華氏451度』、華氏って何?
ドッコイ 華氏は君たちがよく知っている摂氏とは違う温度の表し方さ。
スットコ 華氏451度は、摂氏で言うと
スットコ・ドッコイ・ショー 233度。
ドッコイ これは紙が自然発火する温度。
ショー つまり、本が燃える温度なのさ。
ドッコイ この小説には、本を読むことが禁じられた未来が描かれているんだ。
ポラン 本が読めないなんていや! 私、そんな世界耐えられない。
ドッコイ 主人公は英語でFiremanっていう職業に就いているんだけど、Firemanってどんな職業だかわかる人
スットコ・ドッコイ・ショー いるかな?
マリーネ はい。
ドッコイ どうぞ。
マリーネ 消防士のことだよね。
スットコ・ドッコイ・ショー 正解。
みんな拍手をする。
スットコ でも、近未来では違う職業なんだ。
マリーネ 消防士じゃないの?
スットコ Firemanってそのまま訳せばどんな訳になる?
マリーネ 火の人。
スットコ そう、
スットコ・ドッコイ・ショー 火の人。
スットコ 未来では、Firemanは火を消す人じゃなくて、火をつける人なんだ。
ドッコイ 火をつけて本を燃やす人、それが未来の
スットコ・ドッコイ・ショー Fireman。
スットコ その世界は本を読むことが、禁止されてるんだ。
ドッコイ 「この本、読んではいけないよ」
ショー 「その本、読んではいけないよ」
スットコ 次から次へと禁止されて、最後にはすべての本がなくなってしまう。
エレナ ってことは、ジャンのお父さんって悪い人なんだね?
スットコ いやいや、子ども思いのいい人なのかもしれないよ。
ドッコイ でも、そんないい人が増えていって、どんどん本を読むことを禁止していくようになったら、
スットコ 行き着く先は
ドッコイ 『華氏451度』。
スットコ・ドッコイ・ショー 本のない世界だ!
ディボリー 大丈夫。この「森の中の図書館」でそんなこと起きるはずないよ。
スットコ・ドッコイ・ショー そうだな。
みんなが笑う。
Book Birdsのこのみと栞が登場する。
このみ その時は、この図書館から本がなくなるなんて誰も思わなかった。
栞 でも起きるはずないことが起きるのがドラマ。
戦場を表す効果音が響く。
このみ ある日、この平和なシンリードで戦争が始まった。
栞 隣の砂の国・サンドーラとの戦争が。
エレナ ひどい、砂の国・サンドーラがシンリードに侵略してきたのね。
このみ それが……
エレナ そうじゃないの?
このみ 戦争を始めたのはシンリードなの。
子どもたち えー!
ダニエル どうしてシンリードが戦争なんか始めたの?
栞 「サンドーラに住んでいるシンリードの人たちが虐待されている。仲間を助けるための正義の戦いをするんだ」
このみ そう、ソンバーユ大統領は言っている。
ダニエル よかった、シンリードが始めたのは正義の戦争なんだね。
ディボリー でも、正義の戦争なんて、あるのかな。
このみ 戦争が始まって数日後、将軍グスタボーラとFiremanたちがこの図書館にやってきたの。
ダニエル Firemanって、どっちのFireman?
このみ それはもちろん……
その時、将軍グスタボーラ率いるFiremanが図書館に入ってくる。
このみと栞が退場する。
ディボリー あんたたち、誰だい?
ナスタチウム あんたたちだと。失礼きわまりない。こちらは、グスタボーラ将軍だ。
グスタボーラ ナスタチウム。ルールのない無法地帯という図書館は、ここか。
ナスタチウム はい。自由をはき違えた輩が集まる悪名高い図書館です。
ディボリー ルールならちゃんとあるよ。
グスタボーラ それはどんなルールだ。
ディボリー おしゃべりをしてもいい。
ダニエル 飲んだり食べたりしてもいい。
ディボリー ここはみんなが自由になれるルールがある、すてきな図書館さ。
ナスタチウム そんなものはルールではない。図書館は静かに本を読む場所。話をする場所ではない。
ディコン 図書館で飲食だと。本を汚したらどうするんだ。
ライラ そんなことほとんどないわ。
ディコン ほとんどないということはあるということだな。
ライラ ……
ディコン その可能性をゼロにするためにルールはあるんだ。
クラリス そんなルール、スナフキンがゆるさない。
グスタボーラ スナフキン? そいつはいったい誰だ。
クラリス (本を取り出して)『ムーミン谷の夏祭り』の登場人物。スナフキンは子どもたちを縛り付ける意味のないルールが書かれた立て札をどんどん引っこ抜いていくの。
グスタボーラ スナフキン。愚かなやつだ。
クラリス 私が大好きなスナフキンを馬鹿にしないで。
グスタボーラ よく聞け。今日からこの図書館のルールを変える。この図書館も、世の中の「当たり前」に従ってもらう。
ディボリー あんたたちの当たり前は、僕たちの当たり前じゃない。
ナスタチウム 本を読んでいる人の邪魔をしないために静かにする。本を汚さないために飲食はしない。誰にとっても当たり前のことだ。
グスタボーラ (ディボリーに)お前には、子どもらしさというものがないな。すべての子どもが持つべき子どもらしさが。
ディボリー 僕は背伸びがしたいんだ。僕は壁の向こう側を背伸びをして覗いてみたいんだ。子どもらしいって何? 子どもらしくなるためにはどうしたらいいの? 背伸びをするのをやめればいいの? 僕、そんなの嫌だ。
ディコン まったくもって子どもらしくないやつだ。
ナスタチウム 本がどんなに危険なものか、こいつの存在が証明してくれる。こんなところで本ばかり読んでいるから、頭でっかちで、子どもらしくないやつが生まれるんだ。
ムラード お前、名前はなんだ。
ディボリー ディボリー。
ムラード グスタボーラ将軍、ディボリーを危険人物のリストに加えます。
ディボリー 僕が危険人物……
ムラード そうだ。
グスタボーラ 天井にある鐘を外せ。
ライラ 私たちの鐘をどうするの。
グスタボーラ 図書館に鐘が必要か?
ライラ 私たちの心に鳴り響くの。平和の大切さを教えてくれるの。
ディボリー 僕たちの平和の鐘さ。
ナスタチウム 馬鹿馬鹿しい。平和ってのは戦争に勝ったものが味わえるものだ。その戦争に勝つためには何が必要か分かるか?
ライラ ……
ナスタチウム 武器だ。大砲を作るのに何が必要か知ってるか?
ライラ ……
ナスタチウム ブロンズだよ。そして、あの鐘もブロンズでできているんだ。鐘はこのままここにあっても何の役にも立たない。でも、鐘を溶かして大砲に作り替えればたくさんの敵を倒せる。役に立つ。
グスタボーラ 鐘を取り外せ。取り外して図書館の外に運び出せ。
ダニエル やめろ、やめろ。
ディコン お前も抵抗するのか。お前の名前は?
ダニエル ……ダニエル。
ディコン グスタボーラ将軍、ダニエルも危険人物のリストに加えます。
ロザーナ 危険人物になるとどうなるの?
ディコン だれよりも早く戦場に行ける。そして、シンリードのために戦える。
ロザーナ そうしたら、ディボリーとダニエルが死んじゃう。
ディコン 名誉の戦死だ。
グスタボーラ ぐずぐずしてるひまはない。この図書館の本を運び出すんだ。そして、すべて燃やすんだ。それがお前たちFiremanの仕事だ。
Firemanたち はい。
Firemanが子どもたちや中学生司書から本を取り上げていく。
Book Birds のこのみと栞が登場する。
このみ Firemanたちは図書館の本を外に次々と運び出していきました。
栞 『少年探偵シリーズ』も『華氏451度』も『ムーミン谷の夏祭り』も運び出されました。
このみ そして……
ディコン グスタボーラ将軍、図書館の本、すべて運び出しました。
ムラード 鐘を図書館の外に運び出しました。
グスタボーラ ご苦労。もうこの図書館に用はない。ディボリー、そしてダニエル。戦場で君たちとまた会えること、楽しみにしてるよ(笑う)。
グスタボーラたちが退場する。
ディボリー みんな、みんななくなっちまった。僕たちの物語は終わったんだ。
ライラ 終わってないわ。
ディボリー 僕たち中学生に何ができるっていうんだ。
ライラ 私たち中学生にだってできることはある。きっとあるわ。
■「それいけ!アンポンタン」
突然の雷鳴。
そこにアンポンタン校長先生が突然登場する。
アンポンタン ストーップ。
ディボリー なんでゲキを止めたの?
アンポンタン おや、私をゲキの登場人物だと思っていたのかな。私はゲキの中からここにやってきたんだよ。君たちのゲキを止めるために。
栞 なんで私たちのゲキを止めるの?
アンポンタン 君たち中学生のゲキなど何の役にも立たないからだよ。
サタン酸性 (怒って登場する)アンポンタン!
アンポンタン なんだと。
サタン酸性 アンポンタン校長先生。本題はこれからです。答えてください。○でしょうか×でしょうか。「中学生は演劇を通して何かを変えることができる」
アンポンタン ×だ。中学生に何かを変える力などない。不可能だ!だから私はこのゲキを止める。
サタン酸性 ゲキを止めるな!
アンポンタン それはできない。
サタン酸性 校長先生は「あ・く・ま・で」ゲキを止めると言うんですか。
アンポンタン サタン君、それが「あくまで」の正しい使い方だよ。それでは、今度は私から君に質問しよう。君は、ヒーローになるためなら、本当に悪魔になれるのか。
サタン酸性 校長先生、それは言葉の綾です。私が元天使だということを忘れたんですか。本当の悪魔は、アンポンタン校長先生、あなたです。
アンポンタン 黙れ!
サタン酸性 アンポンタン校長先生。忘れてしまったんですか、『それいけ!アンポンタン』に登場していた頃のあなたを。
アンポンタン ……
サタン酸性 校長先生、答えてください。○でしょうか×でしょうか。
アンポンタン ……
サタン酸性 『それいけ! アンポンタン』の主人公・アンポンタンは、不可能と思えることにチャレンジするヒーローだった。
アンポンタン ……○だ。
サタン酸性 アンポンタンの夢は、あまりにもばかげていたので、みんなからアンポンタンとバカにされた。
アンポンタン ……○だ。
サタン酸性 アンポンタンは、みんなからどれだけアンポンタンと言われても、みんなが×だと言う彼の夢を、なんとか○にしようと努力するアンポンタンだった。
アンポンタン …………○だ。
サタン酸性 僕はそんなアンポンタンが大好きだった。
アンポンタン ……
サタン酸性 ……○です。
アンポンタン ……
サタン酸性 アンポンタン校長先生。ここにいる中学生は演劇で世界を平和にしようとしているアンポンタンなんです。戦いではなく、笑いで元気の輪を広げようとしているアンポンタンなんです。僕が大好きな、アンポンタンなんです。
アンポンタン ……(昔を思い出す)
サタン酸性 それいけ! アンポンタン!
みんな それいけ! アンポンタン!
アンポンタン そこまで言うなら、続けてみろ。ゲキを止めるな!
みんな ゲキを止めるな!
■エピローグ
Book Birdsの4人が登場する。
このみ こうしてシンリードの中学生はこの物語を止めずに続けていったのです。
栞 さて、すべての本が運び出されてしまった図書館。この図書館はこの後どうなるのでしょうか。
樹 実は、中学生の力で、この図書館は生まれかわり、戦争も終わることになるのですが……
胡桃 その物語は次の機会にお届けしたいと思います。
■もう一つのエピローグ
舞 オッケーです。ビデオ撮影うまくいきました。この映像で地区大会に参加できまーす。
みんなが大喜びする。
そして、静止する。
このみ ゲキを止めるな!
みんな ゲキを止めるな!